今更な話題かもしれませんが、あまり知られていないと思うので記事にしておきます。サンプルコードとして
#include <Windows.h> BOOL APIENTRY DllMain(HMODULE, DWORD, LPVOID) { return TRUE; } extern "C" int __stdcall Add(int a, int b) { return a + b; }
でAdd関数をエクスポートする場合を考えます。
DLLで関数をエクスポートする方法の中でもっともよく使われる方法はモジュール定義(.def)ファイルです。
LIBRARY EXPORTS Add
で作成したファイルをリンカーオプション/DEFで指定します。
この方法の問題点は、定義が分かれてしまい、ソースコードからはどの関数がエクスポートされるか判別できないことです。
そこでソースコード内にエクスポートするかどうかを埋め込む方法が提供されています。__declspec(dllexport)を指定する方法です。
extern "C" __declspec(dllexport) int __stdcall Add(int a, int b) { return a + b; }
__declspec(dllexport)をextern "C"の後~__stdcallの前の辺りに挿入します。
この方法の問題点は、x86においてエクスポートされる関数名が_Add@8(装飾名)となってしまうことです。これは呼び出し規約において呼び出し先関数が引数のスタックを復元するため、復元するサイズを呼び出し元に通知する必要があるからです。
そこでこの問題を解消する別の解決策を模索します。
- モジュール定義ファイルにおいてはエクスポートする関数名を明示することができます。
- リンカーオプション/EXPORTはモジュール定義ファイルとほぼ同様の書式で、ドキュメントにはありませんが同じ書式を使用してエクスポートする関数名を明示できます。
- #pragma commentを使用するとリンカーオプション/EXPORTをソースコード内で指定できます。
- 定義済みマクロ__FUNCTION__と__FUNCDNAME__を使用すると関数名と装飾名が得られます。
以上を総合すると
extern "C" int __stdcall Add(int a, int b) { #pragma comment(linker, "/EXPORT:" __FUNCTION__ "=" __FUNCDNAME__) return a + b; }
これでモジュール定義ファイルを用いることなく、ソースコード内での記述で、関数をエクスポートすることができまし…たんですが、IntelliSenseがexpected a ')'と警告します。余計なお世話ですがこれも解消しましょう。
- #pragmaはマクロ内で使えないが__pragma()であればマクロで使える。
- IntelliSenseは__EDG__を定義するがコンパイラーは定義しないのでコード分岐できる。
以上を踏まえて最終的に
// ヘッダーなどに #ifdef __EDG__ #define DLLEXPORT #else #define DLLEXPORT __pragma(comment(linker, "/EXPORT:" __FUNCTION__ "=" __FUNCDNAME__)) #endif // 関数内に extern "C" int __stdcall Add(int a, int b) { DLLEXPORT; return a + b; }
と書くことでスマートに記述できるようになりました。